夫から毎日のように、
「愛してる」
「ハグして」
「キスして」
そう言われると、
「この人は私のことを本当に愛してくれているんだ」
と思うかもしれません。
私の夫もそれらの言葉をよく使う人でした。というか今でもそうです。
夫は四六時中一緒にいたがるタイプで、家の中でもどこへ行くにもついてきます。トイレの前までついてくるし、お風呂も一緒に入らないと嫌がる人でした。
「少し距離が近すぎるな」
と感じることはありましたが、これもこの人なりの愛情表現なのだろうと受け止めていました。
夫は私と同じで、幼少期に虐待を受けて育っています。だから当時の私は、愛情に飢えて育った人だから、安心できる場所があれば少しずつ落ち着いていくかもしれないと考えて、できる限り応えてきました。
でもそんな私の苦労をよそに夫は、怒鳴る、人格否定を毎日何度も繰り返します。その直後に、何事もなかったかのように
「ハグして、キスして」
「愛してるって言って」
と求めてくる。応じれば夫は安心しますが、それは一瞬で、また同じことの繰り返し。拒否すれば怒り、
「離婚する」
「死ぬ」
「お前は悪魔だ」
「地獄に落ちろ」
と始まります。
私は長い間勘違いしていましたが、夫が求めているのは愛情ではなく、私がどれだけ傷つこうが、変わらず愛し続けてくれるのかを確認することです。
夫の行動の背景を調べて、ようやく腑に落ちました。この記事ではそれを書いていきます。
境界性パーソナリティ障害(BPD)と夫
私は夫の言動を理解するために、心理学や脳科学だけでなく、さまざまな精神疾患やパーソナリティ障害についても調べました。
その中で、夫の特徴とかなり重なると感じたのが、境界性パーソナリティ障害(BPD)です。
先に書いておくと、私は医師ではないので、夫を診断することはできません。夫がBPDだとここで断言するつもありはありません。
ここに書くのは、私が調べた一般的な特徴と、私から見た夫の言動を照らし合わせた話です。
そしてもう一つ。BPDと診断された人がみな、人を怒鳴ったり傷つけたりするわけではありません。
むしろ自分の苦しさと向き合いながら治療に取り組んでいる人がたくさんいます。ここから書くのは、あくまでうちの夫の話です。
境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情の波が激しく、人間関係が不安定になりやすい特徴があります。主に、
- 見捨てられることへの強い不安
- 相手を理想化したり、急に強く否定したりする
- 怒りや不安の感情をコントロールしにくい
- 「離れないで」と試すような行動をする
- 衝動的な行動や自傷行為
- 慢性的な空虚感
などが見られます。
また、先天的な気質だけでなく、幼少期の家庭環境やトラウマ、愛着の形成など、複数の要因が重なっていることもあるようです。
治療では、心理療法を中心に、感情の扱い方や人間関係のパターンを見直していく方法が使われます。
この中は、夫は自傷行為や慢性的な空虚感は全くなくて、代わりに、
- 見捨てられることへの強い不安
- 相手を理想化したり、急に強く否定したりする
- 怒りや不安の感情をコントロールしにくい
- 「離れないで」と試すような行動をする
これらが夫に最も当てはまると感じます。
見捨てられ不安が愛情確認を繰り返させる
見捨てられ不安とは、相手が自分から離れてしまうのではないかという強い不安です。
そのため、
「本当に自分を愛しているのか」
「見捨てられないか」
を何度も確認する行動につながることがあります。
「愛してる、ハグして、キスしてを毎回要求してくる」
それだけを聞くと、
「甘えん坊な旦那さんね」
「かわいいじゃない(笑)ウチの旦那もそうだったらいいのにー」
と思う方もいるかもしれません。
でも、
- 暴言
- 怒鳴る
- 暴れる
- 妻への人格否定
これがセットでついてきます。
私は夫に、
「もしかすると、お母さんとの関係が影響しているんじゃない?」
と聞いたことがあります。
夫は幼少期に母親から虐待を受けており、そのトラウマのためにセラピーに通っていたことがあります。
すると夫は、自分もそう思うと話し、母親との関係でどれだけ苦しかったのか、同じエピソードをなんども私に話してきました。
だから私は、その気持ちを否定することはありませんでした。
「そうだったんだね。」
「それはつらかったね。」
と受け止めながら、何年も根気強く話を聞いてきました。
そのうえで私は何度も、
「でも、怒鳴ったり、人格否定したり、何度も愛情を確認することは、逆に私を離れさせてしまうよ。」
「あなたが同じことをされたらどう思う?」
と、責めるのではなく、落ち着いて繰り返し伝えてきました。
夫の「愛してる」は、私を試す言葉だった
見出しの通り、これがこの記事で一番伝えたいことです。夫の『愛してる』が愛情ではなく試し行動だと確信するまで、何年もかかりました。その過程を書きます。
応じ続けた結果、壊れたのは私だった
私は、
「安心できれば変わる」
「不安が和らげば落ち着く」
という仮説を信じて、できることはなんでもしました。
夫が安心できるならと思い、朝起きてから寝るまで夫に求められるままハグもキスも何度も応えました。不安を拭えるならと思い、「愛してる」と何度も伝えました。
でも・・・正直、途中からは嫌で嫌で仕方ありませんでした。怒鳴られ、人格否定され、その直後に何事もなかったかのようにされる。それも毎日。
「なんで愛してるって返すのが嫌そうなの?俺を愛してたらそれは言えるだろ?」
と言われることを、私は苦痛に感じていました。拒否すれば、
「俺はお前を愛してるのに、お前は俺を愛してないのか?!最低な女だな」
と返ってきます。
それでも、夫が安心できるきっかけになるならと思い、何年も応じ続けた結果、精神科で自律神経失調症や適応障害、不眠などを診断されています。
→ 精神科で診断書を取るまでの話|モラハラ夫との生活が身体と精神に与えた影響
夫も、自分が同じことをされたら「それは嫌だ」と認めていました。それにもかかわらず、同じことを私に毎日繰り返しています。
相手が嫌なことだと知っていて、やっている。だから私は、夫の行動を「夫は知らないだけ」「無意識だった」とは思いません。
最初のころの私は、夫が抱えている不安や怒りも含めて受け止めようとしていました。夫が安心できるように寄り添い、愛情を伝え、何年も支え続ければ、いつか変わると信じていたからです。
人は誰かに支えられたり、愛情を受けたりすることで、自分の問題と向き合い、変わろうと努力できることもあります。私は、そういう人もたくさん見てきました。
でも、夫は全く違います。支えられることを当たり前だと思い、自分が変わるのではなく、私が支え続けることが当然だという態度で、恩を仇で返すように私をボロボロにしてくる。
今振り返ると、当時の私はどうしたらいいかわからず、眠れずに泣く毎日が続きました。優しくしてもダメ、受け止めてもダメ・・・
「私の何がいけないんだろう?もう疲れた、死にたい・・・1分でいいから楽になりたい」
「早く今日が終わってほしい、そして明日目覚めたくない」
そう思いながら、毎日を生きる屍のように過ごしていました。
そんな生活が続きましたが、どうすればいいかということはずっと頭の中でグルグル考えていました。そんななかで、人との距離の取り方や、自分を守る考え方についても学ぶようになりました。
そこで出会ったのが、「境界線(バウンダリー)」という考え方です。
夫が抱えている不安や怒りは、私が代わりに引き受ける問題ではなく、夫自身が向き合う課題だと気づいたのは、境界線を学んだことが大きなきっかけでした。
→境界線を引いてみたらどうなった?|夫は変わらなかったけど私が楽になった話
私は長い間境界線が分からず、長い間、夫の課題まで自分の責任のように背負っていました。
夫が過去に傷ついたことは事実ですし、その苦しさを理解することはできます。
しかし、その傷を理由に人を怒鳴り、人格否定し、自分の感情の後始末まで相手に求めることは、夫自身が責任を持って向き合うべき問題です。
それがアドラー心理学でいう「課題の分離」でした。
理想化と人格否定を繰り返す夫
境界性パーソナリティ障害では、相手を極端に理想化したかと思えば、少しのきっかけで一気に強く否定することがあると言われています。私の夫も、この特徴と重なっています。
さっきまで、
「世界で一番愛してる」
「君ほど素晴らしい人はいない」
と言っていたかと思えば、数分後には、
「お前は悪魔だ」
「俺の母親のほうがお前より何倍もマシだ」
「お前はダメな人間だ」
「精神科へ行け、頭のおかしいビッチが」
「地獄へ落ちろ」
「お前なんて誰からも必要とされない」
そんな罵声を浴びせられます。
「さっきまで世界一だった人が、数分後には世界一最低の人間になる?」
その極端さに、私は何度もショックを受け、戸惑いました。
最初の頃は、
ショックを受け何度も泣いたし、傷つきました。しかし夫を愛していたので、
「怒っているから、つい言い過ぎてしまっただけなのかな」
と無理やり、自分を納得させていました。
でも、同じことが長い間繰り返されるうちに、それは一時的な感情ではなく、夫の人との関わり方の問題だと確信しました。
当たり前ですが、人は誰でも相手に腹が立つことはあります。でも、腹が立ったからといって、それまでの人格や存在そのものを全否定するのは、はっきり言って間違っていると思います。
夫は、怒るたびに私という人間全体を否定し、自分が落ち着くと何事もなかったかのように「愛してる」と言います。
その繰り返しの中で、私は少しずつ、自分がおかしいのではないかと思うようになっていました。私が悪かったのではなく、夫の極端な評価に振り回されていただけです。
それに気づいてから私は、夫の基準に合わせて生きることをやめました。
→ ガスライティングとは?モラハラ被害者が自分を疑うようになる心理操作を解説
感情の起伏が激しいモラハラ夫
「感情の起伏が激しい」と聞くと、単に機嫌が変わりやすい人を想像するかもしれません。それだけでも、そんな人とは一緒にいたくないと思ってしまいますが(笑)
夫はただ単に機嫌が変わりやすい、いわゆる気分屋どころではありません。ほんの些細なきっかけや思い通りにならなかっただけで、数秒、数分のうちに感情が180度変わります。
さっきまで機嫌がよかったのに、突然怒鳴り始める。
先ほど書いた「世界一愛してる」から「悪魔」への切り替わりが、それくらいの速さで起きるのです。
きっかけは本当に些細なことです。例えば私が、
- 料理を作っていたのでハグを後回しにした。
- 「あと5分待って」と言った。
- 夫が思っていた反応を私がしなかった。
それだけで、数秒後にはため息から始まり、キレて怒鳴ってきます。
先ほども書きましたが、最初のころの私は、
「機嫌が悪かっただけなのかな」
と考えようとしてやり過ごすことも多かったです。
でも、同じようなことが繰り返されると、単なる気分の問題ではないと早い段階で気づきました。気づいたからと言って、夫の感情の起伏が収まることは今でもないのですが(笑)
それでも私は、
「なぜ夫はここまで怒鳴るのか」
「なぜ感情がここまで極端に爆発するのか」
について調査を始めました。その途中でたどり着いたのが、夫が怒鳴る原因と、間欠性爆発性障害(IED)でした。
→ 【3年無駄にした】夫が怒鳴る原因を理解しようとして気づいたこと
→ 間欠性爆発性障害(IED)とは?|今日も夫の機嫌ガチャが始まる
愛情を与えるほど依存は強くなる
私は一つ勘違いをしていました。愛情を与えれば、人は変わると思っていたことです。
もちろん、愛情をきっかけに変わる人もいます。でも、その人たちに共通しているのは、自分の問題から逃げず、変わる努力を続けていることです。
夫は全く違います。私の愛情に感謝して自分を見つめ直すのではなく、それを当然のものとして受け取り、もっと求めるようになっただけです。
私は、依存は「求める側」の問題だと思っていました。でも場合によっては、与える側の行動も、求める側の依存を強めてしまうことを知りました。
私が応じれば応じるほど、夫は「もっと与えてもらえる」と考えるようになり、要求が減ることはありません。
愛情は、誰にでも与え続ければいいものではありません。少なくとも、自分の問題と向き合う意思がなく、相手から奪い続ける人に与え続けても、その人のためにも、自分のためにもなりません。
だから私は、夫を満たそうとすることをやめました。
3年以上彼を見てきたからわかることですが、夫には変わる気がありません。つまり、このままでは夫は一生満たされることはないんです。まるで、底が抜けた大きなバケツです(笑)
いつまでたっても自分の経験値や人への感謝が溜まらない。そして、自分が満たされないことを私のせいにする。
もし、私のように「私(妻側)がもっと頑張れば変わるかもしれない」と思いながら、相手の要求に応え続けているなら、一度「共依存」という言葉を調べてみてください。私は境界線を学ぶまで、それが愛情だと思っていました。
相手が変わる意思を持たないまま、自分だけが与え続けても、状況は良くならないどころか、長引けば長引くほど人生を壊されます。
夫が抱えている不安や怒りは、誰かが埋めるものではなく、夫自身が向き合うべき課題です。
優しい人ほど、自分が支え続ければ何とかなると思ってしまうことがあるので、気を付けなければいけません。
夫の行動を調べていく中で、私は愛着障害についても学びました。その内容は、こちらの記事にまとめています。
→ 愛着障害の記事