夫は怒ると、私を罵り、人格を否定します。
そして散々こちらを攻撃したあと、急に被害者の顔をしてきます。
「俺はみじめだ」
「俺は誰からも愛されていない」
「お前も俺を愛していない」
さっきまで私を罵っていた人が、いつの間にか「誰からも愛されない自分」の話をしています。
……いや、いま傷つけられているのは私なんですけど。
私は前から「アダルトチルドレン」という言葉を知っていて、母親から虐待されて育った夫にも、当てはまる部分がかなりあると思っていました。
特に、怒ったときに出てくる「俺はみじめだ」「誰からも愛されない」という言葉には、夫の生い立ちが強く出ているように感じます。
この記事では、アダルトチルドレンについて調べたことと、夫との実体験を書きます。
アダルトチルドレン(AC)とは?診断名ではありません
アダルトチルドレン(AC)とは、子どもの頃に機能不全家族の中で育ち、その影響を大人になっても引きずっている人のことです。
虐待やネグレクト、アルコール依存、過干渉。
本来なら安心して過ごせるはずの家庭で安心できなかった結果、大人になってからも人間関係や感情面でさまざまな問題を抱えやすくなります。
ただ、調べ始めたころの私は、一つ勘違いをしていました。この言葉を、病名だと思っていました。
ACは医学的な病名ではない
アダルトチルドレンは、正式な診断名ではありません。
精神科の診断には、世界標準の基準書が二つあります。
アメリカ精神医学会がまとめている「DSM」と、WHO(世界保健機関)がまとめている「ICD」です。
医師が病名を診断するときは、基本的にこのどちらかに載っている名前を使います。
アダルトチルドレンは、そのどちらにも載っていません。
もともとは1970年代後半のアメリカで、アルコール依存症の親のもとで育った人たちの自助グループ「Adult Children of Alcoholics」から生まれました。
医師が作った病名ではなく、同じ苦しみを持つ当事者たちが、自分たちの生きづらさに付けた名前です。
参考:「Adult Children of Alcoholics(ACA WSO公式・英語)」
「診断名でもないのに」と思う方もいるでしょう。
でも、名前がつくことには意味があります。
ずっと説明のつかなかった生きづらさや、理解できなかった相手の言動に、輪郭が見えてくるからです。
診断はできなくても、理解の枠組みにはなります。
幼少期の虐待が、大人になってからも影響することは研究されている
AC自体は診断名ではありません。
それでも、虐待やネグレクトなど、子どもの頃のつらい経験が、大人になってからの心や体に影響することは、多くの研究で報告されています。
ハーバード大学のCenter on the Developing Childでは、幼少期に強いストレスを長く受け続けると、発達中の脳や、ストレスに反応する仕組みに影響することがあると説明しています。
また、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)でも、虐待やネグレクト、家庭内のさまざまな問題を「小児期逆境体験(ACEs)」として研究しています。
こうした経験が多いほど、成人後のうつ病や依存症、さまざまな身体疾患などと関連することが報告されています。
夫には、母親から受けた虐待の影響が今も根深く残っていると感じる場面が多くあります。
子どもの頃の虐待と複雑性PTSD
アダルトチルドレンについて調べる中で、複雑性PTSD(C-PTSD)との関連も改めて調べました。
WHO(世界保健機関)が定める国際的な診断基準では、複雑性PTSDが正式な診断名として認められています。
長期間くり返される虐待など、逃げることが難しい状況で強いストレスにさらされたあとに起こることがあります。
PTSDの症状に加えて、
- 感情をうまく調整できない
- 自分を強く否定する
- 人間関係を保つことが難しい
といった問題が続くことがあります。
ただし、長期間の虐待を受けた人が、必ず複雑性PTSDになるわけではありません。
子どもの頃の経験が、大人になってからの人間関係にどう影響するのかを調べる中で、私は「愛着」という考え方も知りました。
夫の行動を愛着の面から見た話は、こちらに書いています。
アダルトチルドレンでよく語られる特徴
ACには診断基準がないので、
「これに当てはまればAC」
という決まったチェックリストもありません。
アメリカには、アルコール依存や機能不全のある家庭で育った人たちの自助グループ「ACA(Adult Children of Alcoholics)」があります。
そのACAでは、当事者たちに共通して見られたものとして、14の特徴をまとめています。
たとえば、
- 人との関わりを避けたり、権威のある人を怖がる
- 人から認めてもらおうとしすぎる
- 怒っている人や批判に強く反応する
- 自分のことより、他人の問題を背負いすぎる
- 自分の感情を押し込める
- 自分を厳しく評価し、自己評価が低い
- 見捨てられることを強く怖がる
といったものです。
これは医学的な診断基準ではなく、ACAという自助グループが、当事者に共通して見られたものをまとめたものです。
私にも、自己評価の低さや、人間関係で距離感が分からなくなることなど、思い当たる部分がありました。
私も親から虐待を受けて育ちました。
境界線というものが分からず、人に尽くしすぎたり、嫌なことを断れなかったりして、人間関係ではずいぶん苦労しました。
「俺はみじめ」が口癖の夫の話
ここからは、夫の言動について書いていきます。まずは、タイトルにも書いた口癖の話からです。
「俺はみじめだ」「誰からも愛されない」と怒鳴る夫
夫は母親について、
「俺の家族はクレイジーだ」
と言うことはあります。
ただ、母親への怒りや嫌悪を延々と口にする人ではありません。
でも夫が私を怒鳴っているときは、
「俺はみじめだ」
「誰からも愛されない」
「お前は俺を愛していない」
と続きます。
夫を何十年も傷つけてきたのは私ではありません。
迷惑な話です。
みじめなのも、不幸なのも、怒るのも、妻のせい
夫の世界では、悪いのはいつも自分以外の誰かです。
問題が起きても、解決しようとはしません。
まず怒り、論点をずらします。
向き合うべき課題があっても、都合が悪いと感じると、どうすればいいかを考えるのではなく、被害者モードに入ります。
そして責任は私になすりつけます。
夫の口癖は、もう一つあります。
「What did I do?!(俺が何をしたって言うんだ!?)」
ちょっとした一言でも、夫が「責められた」と思ったら、もうそういうこととして話が進みます。
このあたりは、認知の歪みについて書いた記事に詳しくまとめています。
クレイジーだと言いながら、離れられない
夫は、
「俺の家族はクレイジーだ」
と言います。
夫がアメリカを出た理由は、母親から離れるためだったと言っていました。
それなのに、母親とのやり取りはほぼ毎日ありました。
誕生日、母の日、クリスマスには、アメリカの花屋に電話して花を贈ることを欠かしませんでした。
これを普通の親子関係と呼ぶのは、私には無理でした。
母親から離れられない気持ちそのものは、私にも分かります。
私も親から虐待を受けて育ったので、親への気持ちが簡単に割り切れないことは知っています。
夫がその関係の中で苦しんでいるだけなら、私はここまで嫌悪感を持たなかったと思います。
でも夫は、母親との間で残ったドロドロしたものを、自分で処理しようとせず、私に押し付けてきます。
母親から罵倒され続けても、お互いに
「I love you」
と言い合う。
母親から離れたいと言いながら、関係は切らない。
傷つけられても、また何事もなかったように「I love you」に戻る。
私には、その親子関係がかなり異様に見えました。
母親から離れられない理由も調べた
虐待された親と、大人になっても関係を続ける人についても調べました。
Psychology Todayの記事では、傷つけてくる親と関係を続ける理由として、次のようなものが挙げられています。
- 親から愛情や承認を得たい
- いつか親が変わるかもしれないと期待している
- 親と距離を取ることに罪悪感や義務感がある
- 親と距離を取ることで、ほかの家族との関係まで失うのが怖い
「あ、これ夫が言ってたな」と思うものがいくつかありました。
夫は、
「いつか母親が変わって、また自分を愛してくれるかもしれない」
と期待していました。
母親との関係の話になると、
「親と仲が悪いことを、親戚には知られたくない」
「母親と距離を取ると、罪悪感がある」
と、なぜか私に怒りながら言うこともありました。
親子でも起こる「トラウマボンディング」
もう一つ知ったのが「トラウマボンディング」という言葉です。
これは、虐待する相手との間に、腐れ縁のような強い結びつきができてしまうことです。
ひどく傷つけられたかと思えば優しくなったり、関係が落ち着いたりを繰り返すことで、かえって相手から離れられなくなってしまいます。
Cleveland Clinic(アメリカの大手病院)の解説でも、恋人関係だけでなく「虐待する親と子ども」の間でも起こるとされています。
夫と義母の間にも、この強固な結びつきがあったのかもしれません。
母親から怒鳴られて育った夫が、いま私を怒鳴りつけている
夫の話では、中学生くらいの頃から、母親とは罵り合うような喧嘩をするようになったそうです。
私はその場面を見たことがありませんが、夫の話では、アメリカにいた頃は母親が怒ると家を出て車に乗って、何時間も帰ってこないそうです。
母親が家を出ていくと、夫のほうから電話をかけ、
「ママ、どこにいるの?」
「ごめんなさい」
と謝っていたそうです。
日本とアメリカで離れて暮らすようになってからも、週に何度も連絡を取り合っていました。
毎回、母親が難癖をつけて喧嘩に持ち込み、怒鳴り散らしてガチャ切り。
毎回ですよ、毎回。
私だったら、もう二度と連絡を取りません。
母親が怒鳴って電話を切ったあとも、そのことにはお互い触れません。
数日すると何事もなかったようにメッセージが来て、また「I love you」のやり取りが始まります。
母親は、どれだけ夫に怒鳴り散らしても謝りません。
夫も同じように、私を怒鳴り、暴れて人格否定をしても謝りません。
数時間後には普通に話しかけてきて、何度も「I love you」と言ってきます。
ACだからといって、後始末をするのは妻ではない
「なぜ夫はこれほど怒るのか」
こんな夫と一緒にいて、死にたくなるほど心が追い詰められていました。
愛着障害、認知の歪み、境界性パーソナリティ障害など、いろいろ調べていく中で行き着いた言葉の一つが、アダルトチルドレンでした。
夫の言動には当てはまることが多く、幼少期の虐待が今も彼に強く影響しているのは分かります。
でも、だからって母親から受けた傷まで私のせいにされるなんて、たまったもんじゃありません。
それを自分で何とかしようともせず、私をサンドバッグにして怒りや不満をぶつけてくる夫には、もう呆れを通り越して、
「哀れな人」
だと思っています。